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創作物語 ~トム君の話-4~

僕は興奮するジョンに来るのが遅くなったことを深く侘び、
「あなたの命令どおり二度と顔は見せませんので、どうか許してください。」
と丁寧につげて冷静を装い出て行った。

帰りに昔お世話になっていた教会に立ち寄った。
もう、僕を育ててくれた牧師様もお亡くなりになっていて、息子さんが牧師を勤めていた。
息子さんに道を尋ねて僕はアメリアの墓の前に立った。

「アメリア・スミス此処に永眠する」とだけ書かれた白い石碑が立っていた。
僕は小さな花束を手向け、アメリアに謝った。
「ごめんなさい。ちゃんと生きてるときに会いにこれなくてごめんなさい。アメリアがそんなに僕に会いたがってるなんて知らなかったんだ。人の気持ちが判らなくてごめんなさい。」
何かが僕に答えをくれるかもしれない、と思い一生懸命謝ってみたけど、僕に話しかけてくれる存在はいなかった。

小高い丘の上から山の向こうに消えていく夕日が綺麗な春の夜だった。
穏やかな風が草原を吹き抜けるだけだった。景色は昔から変わっていない。
アメリアが居なくなっただけだった。

僕はニューヨークに帰って仕事をしたけど、全然だめだった。
というか、やる気がしない。
なんでせせこましくこんなことしてるんだろうって、疑問しか湧かなかった。
惰性で行ってたけど、3ヶ月頑張った後に辞めて隠居生活をした。

ただ日々を漫然と過ごした。
公園で子供のキャッチボールを眺めたり、一日家で本を読んだりするだけだった。
体は生きてたけど、魂がぽっかりと抜けてしまったみたいで、何かをする気分じゃなかった。
毎日見てる景色も現実感がなくて、心の中ではジョンにいわれたことが何度も繰り返し響いて、どうしてあの時僕は故郷に帰らなかったんだろう。そんな考えに囚われていた。
魂はあの時間に置いてけぼりをくらったみたいだった。

その間、ジョンからの知らせは何も無いまま僕は一人で老人になり、一人で病院で死んだ。
肺炎だったのでそんなに長い闘病でもなくサックリと死ねてよかった。
死ぬ間際に見た事もあった事も無い神様に向かって祈った。
「もし次のチャンスがあるならば、アメリアとジョンと三人でもう一度人生をやり直しさせてください。
こんどこそ2人を幸せにしたいのです。どうかお願いします。」
返答は無かったけど、僕は安らかな永眠についた。

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