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創作物語 ~トム君の話-3~

コネチカットの実家を離れてニューヨークに住むようになった。
その頃はアメリカは13州しかなくてまだ小さな国だったけど、ヨーロッパや南米との交易が盛んで僕は税金の計算をする部署で働いていた。
税率をめぐってイギリスと戦争があったぐらいだから、関税の仕事は多忙を極めた。
しょっちゅう事務所に泊まる事もあった。

そこで僕は若いのに異例の出世をした。
僕は負けないように心がけていただけで、決して大勝を治めたんじゃないんだ。
ただ、大きな勝負は確信のあるときだけにして、負けないように努力しただけさ。
でも、成績を上げたくて勝手に失敗する奴がいたから、負けない僕が浮上しただけであって、天賦の才能じゃない。
運もよかったけど、たゆまぬ努力してただけなんだ。

給料は良かったけど、半分はジョンとアメリアに送っていた。
僕は小さなアパートに一人暮らしをして職場と寝る場所の往復をしてただけだ。
お金は沢山持ってたけど、コレと言ってやりたいことも無く、ただ、優しくしてくれたジョンとアメリアに喜んでもらうために沢山お金を稼ぎたかっただけなんだ。
自慢の子供で居たかったんだ。
お陰様で生涯独身で老後も一人暮らしだったけど、生活にはこまらなかったね。

怒涛のような生活を送ってたけど、ある日不幸な手紙が届いた。
「アメリアが危篤。直に帰れ」
でも、そのとき僕は判断を誤ると国同士の戦争になるって案件に取り掛かっている真っ最中だった。

僕は迷った。
此処で手を抜いたら、僕が今まで積み上げてきた社会的地位は全て無くなる可能性が高い。
今だから素直に言えるけど仕事で結果を出し続けていたし、ゲームに勝つ感覚が楽しくて仕事に夢中になってたかもしれない。
それに、僕は自分自身がアメリアに会う事に価値があるなんて考えられなかった。
僕が帰ってもアメリアの病気を治してあげることは出来ない。
でも、ここで大金を稼げば高額診療しか受け付けないいい医者に診せることも出来る。
僕自身が行くよりもよっぽどジョンもアメリアもお金を送ったほうが歓ぶだろう。
そう判断したんだ。
僕はニューヨークで仕事を続けた。

そして手紙が来てから3週間が過ぎた頃、僕は故郷のコネチカットに帰った。
育ててくれたジョンとアメリアの家に着いた。
懐かしい家だが昔と比べてペンキが色あせてて古ぼけた感じ合した。

家の中にはには憔悴しきったジョンがソファにもたれかかって座っていた。
「遅くなってすみません。アメリアは・・・」
「死んだ。1週間前に。」
僕はショックだった。死亡したとの手紙は受け取っていなかったので、まだ生きているんじゃないかと期待してた。
「なぜ、こんなに帰りがおそいんだトム」
「すみません。生涯で一番大きな仕事があったんです。どうしても帰れませんでした」
「なぜだ」
「何故って・・仕事があったから・・」
「アメリアよりもお前は仕事を選んだんだな」
「そういった意味で言ったわけでは・・ありません・・・私はアメリアを心から愛してます」
「しかし!!お前は!金のほうがアメリアよりも大事だったから、アメリアの死に際に帰ってやらなかったんだろ?
お前は!!何も判ってなかった!アメリアは最後の最後までお前の顔を一目みたい!トムは元気なのか?誰かに苛められて泣いたりしてないのか?ちゃんとご飯は食べているのか?朦朧とした意識の中で何度も何度も俺に聞いてたんだぞ!!ソレなのにお前という奴は!
金に目がくらんでアメリアに合いに来ないで仕事を優先しただと!!恩を仇で返しやがって!!アメリアは最後の最後までお前の心配しかしてなかった!何故生きているうちに元気な顔をみせてやれないんだ!仕事がなんだ!!金がなんだ!!何故死ぬ間際のアメリアを安心させてやらなかったんだ!
お前などもう、親でも子でもないわ!二度と顔を見せるな、出て行け!」

ジョンとアメリアは最高に、いい夫婦だった。
こんなパートナーさえいれば幸せだろうなって僕も思う。
ジョンは確かに僕のことを愛してくれてたけど、それ以上にアメリアが大切だったんだ。
酷い言い方をされたけど、僕もアメリアが好きだったからジョンの気持ちも良く判った。

僕は呆然とその場に立ち尽くしていた。
この世の中にそんなに僕のことを愛したり、心配してくれる人間がいたなんて、今まで想像すらしたことがなかったんだ。
しかも、その相手が僕が一番大好きなアメリアだったなんて。
僕のお金は必要とされていても僕自身がそんなに必要とされてたなんて、夢にも思ってなかったんだ。

そして、物凄い後悔と絶望が僕を襲った。
僕はなんて事をしてしまったんだろうってね。
確かにあの時の仕事は国家の運命に影響を与えたかも知れない。だが、ソレがなんだったのか。
僕の代わりはいたんじゃないか?僕がいなくても誰かが何とかできたんじゃないのか?
そんなものに何の意味があったのか。
アメリアが安心して天国に旅立っていける、アメリアの心の幸せと100万ドルとどっちが僕にとって意味の有る存在か比べようも無い。
アメリアに決まってる。
そもそも僕は生きるためにそんなに沢山のお金なんて必要なかった。
元々、ジョンとアメリアに幸せになって欲しくて、喜んでもらいたくて働いただけだ。
それだけだったんだ。

[トム君の話-4]に続く。
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