記事一覧

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

創作物語 ~トム君の話-2~

でもさ、神様はちゃんと頑張ってる僕のこと見ててくださったんだと思う。
子供が出来なかった夫婦が来て誰か男の子を引き取りたいって来たんだ。
優しそうな人達だったし、小奇麗で上品に見えた。
孤児院は最低限の生活は保障してくれてるけど、そんなにいい暮らしじゃない。
特に僕みたいに周りの子供達にいじめのターゲットにされてると、ご飯が食べられない日が続くのも当たり前だったし、寒い日はベッドを取られ、暑い日には一番風通しの悪い場所で寝ることになるんだ。
牧師様がどんなに注意しても基本的にはやさしいから、皆牧師様に見つからないように隠れてコソッリと意地悪をする。
いつも一人で居る僕を牧師様は可哀相だとは思ってくれていたらしい。
僕のことをその夫婦に推薦してくれたのかもしれない。

教会に居た頃、僕は自分を守るために一生懸命、掃除や炊事、水汲み、巻き割り、しんどい仕事は進んでやっていたし、神父様に対しても常に礼儀正しくしてた。
普段の努力が実ったんだ。
この子なら養父母の下で神父様の顔に泥を塗るようなまねはしないだろうって思われたのかな。

僕はめでたく養父母の下に引き取られていった。僕は7歳のときだった。
養父はジョン・スミス、養母はアメリア・スミスという名前だった僕はこの家でトム・スミスになった。

ジョンとアメリアはまだ30代だったから若いんだけど、アメリアが重い病気をしてから子供が望めなくなったらしい。
でも、子供が好きなアメリアが養子を迎えたいってジョンに頼んだらしいんだ。
もっと小さな子供を引き取るつもりだったんだけど、何故かアメリアが遠くから見た僕のことを気に入ってくれたらしいよ。
引き取られた先でアメリアは
「今日から此処はあなたの御家なの。自分の家だからくつろいでね」といった。
「ハイ。マダム」と言って僕は家の掃除や巻き割りも手伝った。

孤児院から出て行った先輩達はほぼ女中か下男、その家の下働きをする人間が欲しくて引き取られる人がほとんどだったんだ。仕事があるだけましだ。
中にはもっと酷いことをされる人もいたらしい。
最終的には飽きられたら奴隷商人にこっそりと売り飛ばされ、どこか遠く、南部に行って行方がわからない人も居た。
生きてるか死んでるかも判らない。
だから、僕は気に入られてずっとこの土地で暮らせるようにがんばったんだ。

「あなたはこの家の子供として引き取られたのよ。なんでそんなに頑張ってるの?」
「いえ、マダム。僕はこの家に引き取られてから、寝る場所はふかふかだし、食べ物も十分だし、寒い日には暖炉にあたる事も許されています。こんなに幸せな生活を僕はした事がありません。感謝の気持ちを表そうと思ったのです」
「まあ、こんなに小さいのにそんなに苦労してたのね・・・それでしっかりしてるのね。子供は子供らしくしてていいのよ」
子供が子供らしく振舞ってコレまでに散々な目にあってきてたので、僕は今更自分を変える気は毛頭なかった。
「私は十分幸せです。出来ればこの家に一生置いていただきたいほどです」
「まあ、あなたが喜んでくれたら一番私は嬉しいのよ。可愛らしい男の子の天使の微笑みはそれだけで十分価値があるものなの。
ねえ、トム、あなたこの家に来てから何もおねだりしたことはないわよねえ。何か買って欲しいものとかないの?馬なんかいいんじゃない?」
「とんでもありません。私が欲しいものは全てこの家にあります」

そういって僕はその場を逃げ出したけど、アメリアはしつこかった。
そして事あるごとに僕に構った。
そして、僕の希望は何?欲しい物はないの?お願い事は?としつこく聞いてきた。
親というものは自分を捨てた顔も知らない女しか思い浮かばないので、どんなものだかも想像できなかったけど、アメリアの根気に僕は負けてしまった。
アメリアとジョンのことは信頼してもいいんじゃないかと気が緩んできた。

「ねえ、トムあなたはナニが欲しいの?」
「僕は出来たら学校に行って勉強をしてみたいです」
「まあ、なんだかあなたらしいわ。始めて本当の気持ちをいってくれたのね。私嬉しい!」

アメリアとジョンはコネチカットで一番いい学校に僕を入れてくれた。
着る物も家も質素なんだけど、やっぱりあの2人はかなり裕福なんだってことが入れてくれた学校でよくわかった。
なんだか判らないけど、僕はその頃には何とかして2人を僕の力で喜ばせたいって気持ちでイッパイだった。
2人の期待と希望は何だろう。僕に叶えることができることかな?
そんな事ばっかり考えてた。

なんとなく勉強をしたらお金持ちになれるんじゃないかな?ってボンヤリした子供のヴィションで学校を希望したけど、周りのの子達の話しを聞いてみたら、みんな勉強すると親が喜ぶ、いい成績を取って帰るとお小遣いが増えて嬉しいとか言ってんだ。
ふーん、そんな事で喜んでもらえるなら真冬の池に飛び込むよりよっぽどお安い御用だと思い僕は常にトップグループに入れるように勉強も運動も頑張った。
子供の頃の僕なりに最大限「両親が自慢できるいい子」に見えるような努力をしたよ。
聖書の内容は全部暗記してたし、家の仕事は進んでやった。

学校ではお金持ちの家の子が多かったんで、孤児院に居たときみたいに強烈な苛めはなかった。
全員がおっとりで偉そうだから僕の偉そうがかすんだのもあるかな。
それに常に成績優秀だったので突っかかってくる奴もいなかったし、昔のことが嘘のように平和な暮らしぶりだった。
でも、心の底ではいつも深い悲しみはもっていた。「僕が悪い子だから親に捨てられたんだ。僕は人から愛される価値なんてない」どんなにいい成績を取っても「僕は価値がない」が消えたことは決して無かった。

でもさ、コレってイイこともあるんだよ。「自分には価値が無い」なら作ってやらなきゃ他人と同じスタート地点にも立てないってことだろ?
自分の体力の限界を超える努力ができるんだ。
自分が疲れてることに気がつかずに勉強し続けたり出来るんだ。
何かが終わった後病気で倒れたことは何度もあった。
人と比べて頭がいいわけじゃなくても、人の10倍頑張れば大抵のことは何とかできた。
大学までは一般的な親が喜んでくれる進路を進めた。

大人になった僕は政府の役人になった。
その頃一番名誉があってお金も稼げるいい仕事だったからね。

[トム君の話-3] に続く。

スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。